ホストクラブ売掛とは|仕組みと改正風営法で本当に禁止されたもの
歌舞伎町のホストクラブは2024年4月に売掛を全廃しました。13グループ220店が参加した業界の自主規制ですが、条例ではなく罰則がありません。そのため「立替」「前入金」と名前を変えた形が残っています。改正風営法が禁じたのも行為であって売掛自体ではなく、すでにある売掛金は有効な債権です。掲載79店の支払い方法と初回料金の実データつき。


この記事の役割(売掛・借金関連の整理)
ホスランクには「売掛・借金」を扱う記事が3本あります。目的が違うので使い分けてください:
| 知りたいこと | 読むべき記事 |
|---|---|
| 売掛の制度・なぜ問題になったかを理解したい(本記事) | このまま読み進めてください |
| 売掛を払えなくなった/飛んだ時のリスク | 売掛を飛ぶとどうなる? |
| 既に借金がある/今すぐ相談したい | ホスト借金の対処法・無料相談窓口 |
本記事は「売掛の歴史・なぜ問題視されたか・2025年改正風営法後の現在地」を扱います。教育的な解説が中心です。今まさに困っている方は、上記2記事を先にご覧ください。
売掛の歴史と現在地 早見表
| 時期 | 何が起きたか |
|---|---|
| 2023年以前 | 一部の店舗・ホストが支払い能力を超えた注文を促し売掛化。社会問題へ |
| 2023年12月 | 歌舞伎町の13グループ・220店が、新宿区との連絡会で売掛全廃の方針を表明 |
| 2024年1月〜3月 | 許容する売掛の規模を段階的に縮小 |
| 2024年4月 | 歌舞伎町で売掛が全廃(業界の自主規制。条例ではなく罰則もない) |
| 2025年6月28日 | 改正風営法が施行。色恋営業・困惑営業・支払能力を超える勧誘を禁止 |
| 2026年の現在 | 掲載79店は現金97%・カード86%が対応。初回料金の中央値は3,000円。一方で「立替」「前入金」が登場 |
まず結論です。歌舞伎町のホストクラブでは、2024年4月に売掛が全廃されています。「売掛は禁止された」という理解は、現場の実態として正しいものです。
ただし、これには重要な但し書きが3つあります。この記事はその3点を順に説明します。
- 全廃を決めたのは業界の自主規制であって、条例でも法律でもありません。罰則がありません
- 国の法律(改正風営法)も、売掛という支払い方法そのものは禁止していません。禁止したのは「行為」です
- そのため、「立替」「前入金」と名前を変えた同じ仕組みが残っています
「禁止されたから払わなくていい」は誤りです
先に、実害の出る誤解をひとつ潰しておきます。
「売掛は禁止された」と聞いて、すでにある売掛金も払わなくていいと考える人がいます。違います。改正風営法も自主規制も、成立済みの売掛金を無効にする効力は持ちません。法律上は有効な債権のままです。
放置すれば、内容証明・支払督促を経て給与差押えまで進みます(売掛を飛ぶとどうなる?)。払えないなら逃げずに相談してください。相談先はこの記事の最後にまとめています。
なぜ売掛が今も話題になるのか
「売掛」という言葉は、過去のニュースで「ホスト 借金」「売掛地獄」のような形で聞いた方が多い。報道のショッキングさから、ホストクラブに行くと自動的に借金を背負うイメージが定着している。
ただ、過去の事件と現在の業界の実態には大きなギャップがある。本記事では、そもそも売掛とは何だったのか、なぜ問題になったのか、改正風営法後の現在地、そして売掛と無縁にホストクラブを楽しむ方法を、業界の歴史的背景から解説する。
売掛とは何か
一言でいえば「ツケ払い」
売掛(うりかけ)とは、その日の飲食代を後日支払う仕組みのことです。居酒屋で「今日はツケで」と言うのと同じ概念です。
ホストクラブの場合、ホストが担当するお客様の飲食代を一時的にホストが立て替え、お客様が後日ホストに返済するという形をとることがありました。
なぜ売掛が発生していたのか
ホストの給与体系は、基本的に自分の売上に連動する歩合制です。担当するお客様がたくさん飲んでくれるほど、ホストの収入が上がります。
この仕組みの中で、一部のホストがお客様の支払い能力を超えた注文を促し、その場で払えない分を売掛にするというケースが発生していました。
つまり売掛は、ホストクラブ自体のシステムというよりも、歩合制の報酬体系の中で一部のホストが行っていた営業手法です。
なぜ売掛が社会問題になったのか

高額な売掛と返済問題
問題になったのは、数十万円〜数百万円という高額な売掛が発生し、その返済のために深刻な経済的困難に陥るお客様がいたことです。
一部の報道では、売掛の返済のために風俗店で働くケースや、生活が破綻するケースが取り上げられ、大きな社会問題となりました。
法律の改正(2025年改正風営法)
こうした問題を受け、国も動きました。改正風営法は令和7年(2025年)5月公布・6月28日施行です。売掛や色恋営業といった客側を守る規制は、すべてこの6月28日の施行分に含まれます(同年11月28日施行分は、営業許可の制限など事業者側の規制です)。
- 料金に関する虚偽説明の禁止(第18条の3) — 料金を偽って説明することの禁止
- 色恋営業の禁止(第18条の3) — 恋愛感情を利用して飲食させる営業の禁止
- 注文していない飲食の提供による困惑の禁止(第18条の3第3号) — 頼んでいない酒を出して払わせる手口の禁止
- 威迫による困惑の禁止(第22条の2第1号) — 支払わせる目的で客を威迫することの禁止
- 適合性の原則 — 支払い能力を超える勧誘の禁止(売掛モデルに直撃)
- スカウトバック全面禁止 — スカウト経由の囲い込み禁止
罰則も引き上げられました。無許可営業などは5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、法人には最高3億円の罰金が科されえます。上の禁止行為に違反した場合は、営業停止命令などの行政処分に加えて6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
→ 「支払い能力のない客に高額のシャンパンをツケで入れさせる」という従来の売掛モデルは、営業の仕方として成り立たなくなりました。ただし繰り返しになりますが、売掛という支払い方法そのものが違法になったわけではありません。
歌舞伎町は、法律より先に自分たちで売掛をやめた
実は、国の法改正より1年以上早く動いたのは業界側でした。
2023年12月5日、新宿区役所で開かれた区との連絡会で、歌舞伎町のホストクラブ経営者らが売掛の全廃を表明します。参加したのは13グループ・220店。歌舞伎町の約300店のうち、およそ7割にあたります。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2024年1月〜3月 | 許容する売掛の規模を段階的に縮小 |
| 2024年4月 | 売掛を全廃 |
同時に「20歳未満の新規客の入店を断る」「親族など第三者から取り立てない」といったルールも決められました。
ここで押さえておくべきは、これが自主規制だということです。条例ではありません。違反しても罰則はありません。この点が後で効いてきます。
全国レベルでは、JHCA(一般社団法人日本ホストクラブ健全化推進協議会)が同様の自主規制を設けています。全国の有力16グループ・164店舗が加盟し、売掛禁止を含むルールが実施されています。
(歌舞伎町の売掛全廃の経緯は東京新聞・集英社オンラインの報道による)
売掛は禁止された。ただし完全になくなったとは言い切れない
ここからが、多くの記事が書いていない部分です。
先に結論を書きます。売掛は禁止されました。しかし完全になくなったとは言い切れません。
禁止したのは業界の自主規制で、罰則がありません。そして禁止されたのは「売掛金」という呼び名の仕組みであって、客に支払い能力を超えて使わせる行為そのものではありませんでした。全廃から2か月後の2024年6月、報道はすでにその点を指摘しています。
実際に起きたのは、同じ仕組みが別の名前で続くことでした。
まず、業界が自分で決めて、実際に守っている
先に評価すべき点を書きます。
この全廃は、法律に迫られたものではありません。改正風営法の施行は2025年6月28日。歌舞伎町が売掛をやめたのは、その1年2か月前です。業界が自分たちで決めて、自分たちで実行しました。
そして守られています。掲載79店を調べても、支払い方法に売掛を掲げる店は1つもありませんでした(後述)。決めただけで終わっていません。
ただし、後から払う形そのものは残った
一方で、自主規制には罰則がありません。そして禁止されたのは「売掛金」という呼び名の仕組みであって、後払いという形そのものではありませんでした。
そのため全廃後、名前の違う2つの形が広がります。
「立替」——ホストが個人的に肩代わりする
店に対する客のツケではなく、担当ホストが個人的に立て替える形です。報道では「担当ホストと女性との個人的な貸し借りみたいなもの」と説明されています。
店の帳簿上は当日精算されているので、売掛はゼロです。ただし客から見れば、後から払うことに変わりはありません。返す相手が店ではなくホスト個人に変わっただけです。
「前入金」——先にまとめて預ける
もうひとつが前入金です。イベント前にまとまった金額を預ける形が典型で、売掛の自主規制は「前払い」までは対象にしていないため、規制の外にあります。
前入金についてはホスト前入金の実態とトラブル対策で詳しく扱っています。
つまり「売掛」という名前の仕組みは確かに消えましたが、後払い・前払いという形が消えたわけではありません。
(立替・前入金の実態は弁護士JPニュース・東京新聞の報道による)
客側から見れば、環境ははっきり良くなった
ここは誤解のないように書きます。普通に遊ぶ人にとっては、明確に安全になりました。
- 会計はその場で完結するのが標準になった
- クレジットカード・電子マネーが一般化した
- 色恋営業や未注文の飲食提供が、法律で明確に禁止された
- 料金を事前に確認しやすくなった
立替や前入金が出てくるのは、払える範囲を超えて通おうとしたときです。予算内で遊んでいる限り、そもそも話題にすらなりません。
覚えておくことは1つだけです。「売掛」という言葉が出てこなくても、後から払う話・先に大きく払う話が出てきたら、同じものだと考えてください。
では、いま店はどう払わせているのか
ホスランクが掲載している79店の情報を全項目確認しました(2026年8月時点)。
先に断っておくと、「売掛できます」と公開情報に書く店はありません。全廃の前からです。だから「掲げている店は0店でした」と言っても、それ自体は何も証明しません。
意味があるのは中身のほうです。
| 調べたこと | 結果 |
|---|---|
| 現金に対応(支払い方法の記載がある37店のうち) | 36店(97%) |
| クレジットカードに対応 | 32店(86%) |
| 電子マネーに対応 | 2店(5%) |
| 初回料金の中央値 | 3,000円(最も高い店で5,000円) |
その場で払い切れる手段が揃っています。そして初回料金は中央値3,000円、いちばん高い店でも5,000円でした。そもそも後払いにする必要がない金額で遊べます。掲載店の料金はホストクラブ一覧から店ごとに確認できます。
1店だけ、注意事項に「売掛金」と書いていました
公開情報に売掛という言葉が出てくることは、まずありません。そのなかで1店だけ、支払い方法ではなく注意事項にこう書いていました。
※当グループの売掛金に関して、担当者への直接のお支払を禁止させていただきます。
売掛金が存在しなければ、この注意書きは要りません。「売掛金はあるが、ホスト個人に手渡しさせない」というルールです。ホスト個人が受け取ると店に入金されず、トラブルになるからです。
前に書いた立替を思い出してください。ホストが個人的に肩代わりし、客がホストに直接返す——この注意書きは、まさにその形を禁じています。店側もこの抜け道を把握したうえで、釘を刺しているということです。
売掛なしで安全に楽しむ5つの方法
「売掛なしで楽しむ」のは、実のところ難しくありません。以下の5つを守れば、売掛が発生する場面はまず来ません。
方法1:初回セット料金だけで帰る
初回料金は1,000〜5,000円で飲み放題込み(掲載79店の中央値は3,000円)。この範囲で楽しんで帰れば、追加料金はかかりません。「初回だけで帰ります」と伝えれば、それ以上の注文を促してくる店はまともではありません。
方法2:使う金額を事前に決めておく
2回目以降の来店でも、「今日は○○円まで」と自分の中で上限を決めてから行きましょう。ホストに伝えてもOKです。予算内で最大限楽しませてくれるのが、プロのホストの仕事です。
方法3:現金で行く
クレジットカードだと、つい使いすぎてしまうことがあります。使える金額分の現金だけを持っていくのが、最もシンプルで確実な使いすぎ防止策です。財布に入っている金額以上は物理的に使えないので安心です。
方法4:「売掛はしません」と宣言する
万が一、売掛を提案された場合は「売掛はしません」とはっきり断りましょう。まともなお店・ホストであれば、それ以上勧めてくることはありません。
方法5:口コミ評価の高い健全なお店を選ぶ

そもそも、お店選びの段階で売掛のリスクを排除するのが一番です。口コミで「会計が明朗」「安心して楽しめた」と評価されているお店を選びましょう。ホスランクでは、実際に来店した方のレビューでお店の雰囲気や料金の透明性を確認できます。
安心できるお店の見分け方
お店選びのチェックポイントをまとめます。
| チェックポイント | 安心の目安 |
|---|---|
| 料金の明示 | 公式サイトやSNSで初回料金・システムを公開している |
| 口コミ評価 | 「会計が明朗」「安心できた」という声が多い |
| グループの規模 | 大手グループに所属している(教育・管理が行き届いている) |
| 業界団体への加盟 | JHCAなどの自主規制団体に加盟している |
| 決済方法 | クレジットカードや電子マネーに対応(その場で決済できる) |
これらのポイントを確認してからお店を選べば、売掛の心配をする必要はほとんどありません。
万が一、売掛トラブルに巻き込まれたら
万全の対策をしていても、万が一売掛をしてしまい返済に困った場合は、一人で抱え込まず専門家に相談してください。
相談先一覧
- 消費者ホットライン: 188(いやや)
- 法テラス(日本司法支援センター): 0570-078374
- 警察相談ダイヤル: #9110
- 各自治体の消費生活センター
酔った状態での高額な約束は取り消しが認められる場合がありますし、脅迫的な取り立ては違法です。弁護士に相談すれば減額交渉が可能なケースもあります。一人で悩まず、まずは相談することが大切です。
まとめ
- 歌舞伎町では2024年4月に売掛が全廃された。13グループ・220店(約7割)が参加した業界の自主規制
- ただし条例ではなく、罰則がない
- 改正風営法(2025年6月28日施行)が禁止したのも「行為」。売掛という支払い方法そのものではない
- したがってすでにある売掛金は有効な債権。「禁止されたから払わなくていい」は誤り
- ただし後払い・前払いという形は残っており、「立替」「前入金」と呼ばれている
- 掲載79店は現金97%・カード86%が対応し、その場で払い切れる。ただし1店の注意事項には、売掛金の担当者への直接支払いを禁じる記載がある
- 初回料金は1,000〜5,000円(中央値3,000円)。そもそも売掛を作る必要がない金額で遊べる
- 万が一のトラブルは消費者ホットライン188に相談
「売掛は禁止された」——これは正しい認識です。業界が法律より先に自分たちで決め、実際に守られています。普通に遊ぶ人にとって、ホストクラブは2年前よりはっきり安全になりました。
注意しておくのは1点だけです。「売掛」という言葉が出てこなくても、後から払う話・先に大きく払う話が出たら、同じものと考えてください。予算の範囲で遊んでいる限り、その話は出てきません。
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歌舞伎町で4年間ホストとして勤務した後、2024年に引退(31歳)。現役時代は中堅プレイヤーとして業界の光と影を経験。現在はナイトエンタメ業界のライターとして、元内部の視点から冷静に業界を分析している。
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この記事は ホスランクの編集方針 に基づき、業界経験者によって執筆されています。
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